『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹
三度の飯より読書好き。
そんな人と友達になりたいんだけれど、そういう人って一人で平和に本を読んでいる時間が何よりも大切だから、結局友達になれる機会ってあんまりなかったりするのかも。
私の人生の道標になってくれている、とも言えるほど大好きな作家さん、村上春樹氏。
以前読んだ彼の本で、すごく共感する部分があったので、ご紹介します。
※本記事は引用を含みます
走る作家として有名な村上春樹氏が、自身の体験を元に書いたエッセイです。
我々は七年間にわたる「開かれた」生活から、「閉じられた」生活へと大きく舵を切ったわけだ。そのような「開かれた」生活が、僕の人生のある時点にある期間存在したのは、善きことであったと思う。
そう、彼が経営していた店を畳み、専業作家になった時、生活リズムが180度変化したという描写です。
その時期は僕にとっての、人生の総合的な教育期間みたいなものであり、僕にとっての真の学校だった。
ジャズバーを経営していた「開かれた」期間のことを、このように彼は言います。
私が一番に印象に残っているのはこの部分。
どこかで本来の自分のあり方に復帰する必要があった。
自分らしい生き方を全うする村上氏。
しかし、そもそもの自分の性質、本来のあり方がわかっているというのは、それだけで既に幸福なことではなかろうか、と思います。
たとえ今理想の状態ではなくとも、少なくとも目指すべきゴールは知っている。
今の社会には、そんなことすらも考える余裕が無いくらい、忙しい人もたくさんいるのではないでしょうか。
もちろん彼らは日々を精一杯なんとかこなし、束の間の休息に身を埋め、また日常に帰っていくのでしょう。
自分が何か、ということに向き合うことは、少しばかり怖いことでもあります。
また、時間をかけて自分と対話することでもあります。
しかし、一旦自分の核の部分を知ることができると、人生はもっと幸福なものになるはずです。
私は大学3年生まで、とにかくアクティブで色々なことに手を出し、褒められるために、好かれるためにあらゆる努力をしてきました。
それが自分にとって良いと、充実した人生だと信じて疑いませんでした。
毎日毎日バイトに学生団体、夜ご飯を家で食べることなんてなかった。
でも、スウェーデンに留学に行って、そして帰国後、母の会社を手伝うようになって、人生が変わりました。
いや、別人の人生を生きているという感覚のほうが近いかもしれない。
この話はまた追ってお話することとします。
村上春樹さんの考えには、昔から共感するところがあった。
最近になって、小説のみならず、彼のエッセイのおもしろさを発見したのでありました。
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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