なぜ宇宙はこうであるか『ホーキング、宇宙を語る』スティーヴン・W・ホーキング

安定した世の中と引き換えに人々は仕事を分業するようになった。

人々の専門性が増し、専門領域外にいる残りの人間からは、当該分野で発生していることを正確に把握することが難しくなった。

科学者が即ち哲学者を意味した時代は終わり、学問はどこまでも細分化され、縦割りになった。

結果として何が起こったか?
我々の大半は、科学がいったいどんな方程式を使って我々の世界を描こうとしているのか、さっぱりついていけないでいる。

神は、皆に平等に世界を理解させることよりも、選りすぐりの天才たちが好奇心を好きに満たすことを優先させた。

それが我々の日常レベルで役に立つ代物かどうかはさておき、宇宙、つまり我々の把握する世界の成り立ちを理解できる人間は、ごく限られた一部なのだ。

スティーヴン・ホーキング。アインシュタインの再来。

不幸にもALSという難病を患いながらも、余命宣告を大幅に裏切る形で人類の科学の駒をうんと先に進めた天才がいた。

人類が高度たる所以は、先人たちの経験値を更新していくかたちで発展していくことができるところにある。
それでいてどういうわけか、記憶は引き継げない。

天才が現れなければ、アインシュタインの理論もホーキングの理論も理解されないままに終わってしまう。

人類は科学を完成させることができるのだろうか?
一般人も理解、少なくとも内包するようなかたちで?

あるいは細切れの記憶を持った天才たちが、理論を無限通りのやり方で眺めることが延々と続くのだろうか。

人類は、絶対的な法則を持った方程式を見つけ出そうとしてきた。
それがあれば、あらゆることの説明がつき、さらに未来予測も可能になるだろう。

量子力学の登場によって、その試みは違った様相を帯びることになる。
方程式は、あくまでも幾通りかの可能性を示すに過ぎなくなる。

宇宙ほどの大きさを持った時空間と、タイムトラベルさえ可能になるかもしれない小さな小さな世界。

宇宙の描写は、スケッチの時代から神の意志を汲み取る時代に突入している。

今日まで、科学者はずっと、宇宙が何であるかを説明する新しい理論の展開に心を奪われていて、なぜと問うことができないでいる。一方、なぜと問うことを商売にしている人たち、つまり哲学者は科学理論の進歩についていけないでいる。P242

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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