就職しないで生きる 『最低で最高の本屋』松浦弥太郎

最低で最高の本屋 (集英社文庫)』という、松浦弥太郎さんのエッセイを昨日読み終えた。

彼の本は以前も読んだことがあるのですが(たしか『くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集 (集英社文庫)』とかいうエッセイだった気がする)、今回は前回受けた彼の印象と随分と違った気がしたので、読後感想を記しておくことにする。

※本記事は引用を含みます

このエッセイの序文には、こんな記述がある。

就職しないで生きる方法というのは、働かなくていい方法ではないとすぐにわかります。この違いはとても大きい。

僕らが受けた教育は点数を競い合い、できないことへの努力をしいられ、常に前へ前へと背中を押されるものでした。・・・(中略)・・・良い大学で良い成績、良い会社で良い肩書き、これさえ手にすれば人間として胸を張ることができ、幸せで正しい人生であるとされていました。ほんとかな。

就職しないでいることは決して悪いことではありません。何もしていないから不真面目なのではないし、人間失格でもありません。毎日を少しでも幸せに生きよう、そうするにはどうしたらいいのかと日々工夫することができれば、僕はどんな生き方、過ごし方でもいいと思います。それが自由ということです。

この本の中で、彼は彼の「就職しなかった」人生をありありと描いている。

「本当のことってなんだろう」という問いに答えてもらえないまま、高校をドロップアウトし、土木の日雇いでお金を貯め、アメリカに留学し、本屋を開く……

僕の読後の所感では、彼は人生の中で大いにブレている。
その時々によって心震えるものが違えば、職業も変わってゆく。

もちろん彼なりの信念があり、魂を持って生きているわけだが、それでもこの短いエッセイの中で、彼の興味関心が次々に変わってゆくさまが見える。

それはもちろん悪いことではない。

僕が感じた「松浦弥太郎」像というのは、「どこまでも自分の気持ちに素直であり、またそれを行動に移さねば気が済まない人」だった。

少し話がそれるが、僕は読書が好きだ。特に小説や、たまにエッセイ。本を読む時間を奪われると暴れだすが、逆に1日2,3時間の読書時間を与えてやれば、実によく躾された人間に生まれ変わる。

しかし、僕の読書スタイルは少しばかり変わっているかもしれない。

速読をしているというわけではないのだが、本を読んでもあまり細かい内容は覚えていないのだ。
読んでいる最中にうっかり別の世界へワープしている時もあるし、主人公が驚くタイミングで「ビクッ」としたりもする。砂漠の場面なんかでは息苦しくなるし、でも喉元過ぎれば熱さを忘れている。

そして、一貫して言えるのが、
「本を読み終えた後に、著者や主人公の性格、ものの見方、考え方がなんとなく理解できるようになる。」
ということだ。

つまり、本の中で繰り広げられる事柄だけではなく、「こんな時、あの人ならああいう風に考えるだろうな」という場面が浮かぶ。
だから、それがうまく行くときは、日常生活が大変愉快なものになる。

話を戻そう。
要するに、僕はこの本で松浦弥太郎の(僕なりの)人間像が、けっこう明確に見えたわけだ。

そして、それは清々しく、人間臭く、希望があり、ある部分では共感できるものだった。

最後の解説でよしもとばななさんの言葉が印象的だった。

時代を超えていいものを残す仕事がしたい。お金のためではない。でもお金が全く入らなかったら、あらゆる角度から正しくないと感じているということ。

短い解説だったが、ここにも彼女の人となりが垣間見えた気がした。(僕はすこし傲慢かもしれない)

等身大の可愛らしいよしもとさんが話す様子を見て、前に買ってあってまだ読んでいなかった、よしもとばななさんの『キッチン』を手に取る夜である。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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