個性は誤差範囲でしかない『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹

わたしたちは、ヒトとヒト同士として決定的に違っている。
決定的に、徹底的に。

それは孤独という痛みを我々に与えながら、多様性という救いを与える。

なぜなら、多様性にこそ愛が生まれるからだ。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、その根底をひっくり返してしまう。

コアのコアのコアのコア。
そんな世界では、個性などというものはただの誤差でしかないのだ。
簡単な計算式ひとつで補正されてしまう。

違いのないところに、動きは生まれない。

静止した世界。
平穏。
痛みはなく、救いもない。

そんな世界を、誰が望むのだろう?

不思議なことに、その世界はひどく魅力的に見えるのだ。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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