『アムリタ/吉本ばなな』

新年初めての読ログは、吉本ばななの本。

彼女の文章は、やけに考え事をしたくなる。

答えを求めない、ひとりごとのような思案。

そして、次にどんな言葉が来るのか全く予測できない感じ。

それは、次の展開が読めないミステリーのようなわくわくどきどきした感じとはちょっと違う。

ある人の頭のなかでリアルに起こる出来事は、そんなにもうまく時系列に運ばない。

『アムリタ』は、変な家族とともに暮らし、頭を打って記憶をなくし、また取り戻した女の人のお話。

それはドラマチックというよりは、感受性の世界。

感覚が研ぎ澄まされて、いつでも誰にでも起こりうることも、めったに起こらない奇怪なこともぜんぶごったまぜになって、独特の世界になる。

誰かの特定の視点を通さない世界の見え方なんてない。

いつも一人称で見せてくれる吉本ばななの世界は、そうやってこの世界を違ったふうに見せてくれる。

儚くて、美しくて、すこし痛い。

あたたかくて、透明で、不器用な人間。

生身の人間と、魂の世界。

散りゆくそれは、永遠にも見える。

この一定のリズムで進む不思議さはどこから来るのだろう。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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