『死神の精度/伊坂幸太郎』

リアリティに欠ける物語だけれど、妙に説得力があり、読みやすく、現実味がある。

伊坂幸太郎の魅力は、まさにそんなところにあると思う。

本格ミステリーのように重苦しくなく、それでいてあまりにもぶっ飛んでいるわけでもなく、非常にすらすらと読みやすい。

それでいて、作品の節々でグサリと突き刺さるような表現をする。

この、鋭い観察眼と、難解すぎない文体が、人気の秘密なのだろう。

デビュー作『オーデュボンの祈り』が未だに私の中では最高傑作だけれど、最近は他の作家さんとコラボしたりして、新しい動きが楽しい人だ。

そんな伊坂幸太郎の連続短篇集『死神の精度』

人間の生き死にを決める仕事をしている「死神」が、対象の人物の前に人間の姿をして現れ、しばし時を共に過ごす。

人間の姿をしてはいるものの、人間ではない「彼」の口から語られる人間の描写に、思わずうーんと唸ってしまう。

命の重み云々よりも、客観的な(いや、死神という極度に主観的な)目線から語られる人々の動きが楽しい一冊だった。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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