『PK/伊坂幸太郎』

小説家の中には、本当の「天才」ってのが何人かいると思う。
伊坂幸太郎氏もその一人だ、と私は強く信じている。

『PK』は、ぱっと見る限りでは短編小説集のような体裁をなしている。
「PK」「超人」「密使」という、三つの話。

けれど、これら三つの話は、奇妙に入り組んでいる。
それは単純に、登場人物が同じだとか、同じ対象に対して違う目線から語られる、とかそういう話に留まらない。

ここには「パラレルワールド」というサイエンス・フィクションの夢が、かなり実際的な形で描かれる。

すでに幾度も語られているであろう「タイムスリップ」のお話かと思いきや、過去から未来から、様々な要素が「現在」に影響している。

そもそも、時間が前から後ろに不可逆的に流れていると感じているのは、人間だけではないのか?

さっくり読めるけれど、軽く見てはいけない。

伊坂幸太郎の発する言葉には、読む者を違和感なく異世界に取り込み、さらに本人が気づかぬうちにそっと現実に戻しておくような不思議さがある。

そして、本書のあとがきと解説で垣間見られる、伊坂幸太郎本人の人物像に、三度惚れ直さざるをえないのだった。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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