『杏のふむふむ/杏』

親が偉いと、その子供は往々にして苦労する。
同じ世界で親を超えていくことにはとてつもないハードルがあり、
違う世界に行ってもそれはつきまとい、

「親の七光りだ」と後ろ指を指される。

杏という人物に、個人的興味を抱いたことはなかった。
もともと渡辺謙の娘であることを隠してモデルデビューし、今では娘であることを公表してモデル、女優など多岐にわたる分野で活躍している。
芸能界に疎い私は、彼女に関してはそのくらいの知識しかなかった。

きっかけは、村上春樹。
彼は私の好きな作家で、杏さんと個人的にも親しいと言う。

そんな杏さんがエッセイを書き、村上春樹が解説文を書いたということが、今回この本を手に取ったきっかけだった。
村上春樹のサイトの中でも、ちょくちょく杏さんに言及する場面が出てくる。

どんなひとなのだろう?

彼女への興味がふいに湧いてきた。

そして読後、彼女の印象ががらりと変わった。

まず、読書家で歴史好き、多趣味で陶芸やゴルフなどいろいろとやっている。
好印象だったのが、それらに対する姿勢だ。

周りからの印象だとか、役に立ちそうだとか、そんな理由からではなく、純粋な興味を持って物事に取り組んでいる。
変な先入観を持たず、好き嫌いをしない。

そして、控えめで聞き上手な古風な面があるかと思いきや、アクティブで何事にも果敢に挑戦する。
才能があり、性格がよく、謙虚で、たくましい。
なんだ、完璧じゃないか!と。

それでいて、少しもいやみったらしいところがない。

題名にあるように、「ふむふむ」と人の話に耳を傾ける。

きっとこのような態度を持って生きている人は、色々なことをものすごいスピードで吸収していくのだろう。
杏という人が好きになった一冊だった。素朴なエッセイ。

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