『舟を編む/三浦しをん』

「今の時代は、本屋大賞以外の賞では売れない」と言われている出版業界。
その本屋大賞を受賞し、映画にもなった同作品。

気にはなっていたけれど……わたしは文庫派なので読めてなかった一冊。

先日本屋を巡っていたら、文庫が発売されていたので迷わず購入!

話の筋としては、出版社の辞書編纂部が新しい辞書を作っていくというシンプルなもの。
出版社の金食い虫と言われるほど、その制作に時間がかかり、かつ利益につながるまでに時間が掛かる。

とことん効率化され、画一化され、短期的な業績にばかり目が行きがちな現代社会をそのまま反映している気がした。

こういう、「すぐにはお金にならないけれど、人間が生きる上で糧になるもの」をなくさない社会でありたい。

そして、ところどころに現れる美しい日本語の描写。
取り巻く人々の日常にうまく入り込んでいる辞書の言葉たち。

辞書に載っている言葉は、決して日常と切り離されてはいない。
むしろ、日常の中にあふれている。
あえて意識されることはないけれど。

それは、毎日をふうわりと彩ってくれているのだと思う。

そういえば、辞書を長らく引いていない。
そして、やっぱり言葉は生きている。
百年前の言葉は、今の時代では古くなる。
どんなに「歴史的に正しい」言葉でも、使われない言葉は錆びてゆく。

だから。
自分の口から出る言葉にも、もう少し愛情を込めてやらないと、言葉はどんどん荒んでいってしまうよな、と思った。
使う言葉は、後世の言葉を作ってゆくから。
久しぶりに大ヒットの作品だった。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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