『シャーロック・ホームズの冒険/コナン・ドイル』

100年以上も前に書かれた、推理小説の先駆けとも言える作品。
あの国民的人気アニメから、「コナン・ドイル」という名前に親しみのある方も多いかもしれない。

一言で感想を言うなら、
「現代のミステリー小説と比べてベッタベタやなぁ」
であろう。

そう、舞台設定にも、物語の進み方にも、伏線の張り方にも、推理方法にも、既出感がものすごいのだ。
もちろん、時代背景を考慮した古さというのはある。
それでも、現代推理小説では決して味わえない、今の感覚で言えば非科学的とも思える方法で推理を行っていく職業的探偵のあり方が描かれている。

そして、そのベタで非現実的な推理小説に、どうしてこうも魅了されてしまうのだろうということも不思議だった。

自分なりにその理由を考えてみると、
・ホームズとワトスンのキャラクターがありありと形作られている
・19世紀当時のイギリスの世界にタイムスリップできる
といったところになろうか。

これは本来のミステリー的楽しみ方とはまた違うのかもしれないが、これはこれで「アリ」な楽しみ方である気がする。

古典文学を読む時、それを「古典」として楽しむのか、それとも今の自分が欲しているものとして読むのか、という話がある。

つまりはこういうことなのだと思う。
わたしにとって、『シャーロック・ホームズの冒険』は古典として読むにはふさわしい作品なのだ。本当に心から楽しめた。

当時に生まれていたら、時代の最先端を行く推理小説として楽しんだだろうし、今は古典としてその時代感を楽しんでいる。

「今ここにある問題へのアクチュアルな回答(あるいは回答の示唆)を求めて読んでいる」と村上春樹が言及する作家たちについては、わたしの場合はヘルマン・ヘッセということになるかもしれない。

いずれにせよ、両者の間には明確な線引きが存在するように思う。

古典として読む場合、多かれ少なかれそこには甘い評価なるものが含まれる気がする。
「まぁ古い作品なのだから」と。

けれど、そういうのを差し引いても、ホームズの魅力的なキャラクターには結構はまってしまった。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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