社会に出る前に読んでよかった小説13選 〜独断と偏見で選ぶ〜(H.27.4.11時点)

前から言ってたあれ、やっとやります。
逆に選べなくて、13冊になっちゃいましたが。
図書館で借りた分など多分忘れてるやつもたくさんありそうなので、暫定ということでご了承ください。

1,『キャッチャー・イン・ザ・ライ/サリンジャー』

かなり前に読んだので、筋を結構忘れてしまいました。
ただ、この時の自分の気持ちは結構主人公に入れ込んだ気がする。
人は多かれ少なかれ、こういう「闇」みたいなものを抱えて生きているのではなかろうか。
けれど、それが世間ではさっぱり明るみに出ることはないし、あたかも存在しないもののように取り扱われている。
そこにずしりと存在感を持って横たわる、「心の重し」。
それは若い時により強く感じられ、年齢を重ねると往々にして抑えこまれていく種類の異物なのかもしれない。

2,『フラニーとズーイ/サリンジャー』

頭の切れる兄妹が、宗教や自身の思考に翻弄され、現実との折り合いをつけようともがく。
哲学的にものを考えるということは、時として社会生活を送る上で障壁になりうる。
前半の動きのある場面と、後半の思考を中心とした静的な描写のコントラストが美しい。

やや文章に難解な点もあるけれど、再読したい一冊。

3,『オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎』

もう何度も読んでいる。
伊坂幸太郎の作品で一番好きな一冊。

ガラパゴス化した島に行き着いた主人公が、奇妙な特徴を持つ住人たちと出会う。
そこで起こった「喋るカカシ」殺人事件――。
未来を予知できるカカシは、どうして自分の死を予知できなかったのか?

社会に向けた尖ったメッセージが詰まった、伊坂幸太郎デビュー作。

4,『走ることについて語るときに僕の語ること/村上春樹』

村上春樹という作家は、走る。
毎日朝早くに起きだし、バランスの取れた質素な食事を好み、走る。
そこには彼のどんなこだわりがあるのか?
作家という職業を営む上で、そのようなライフスタイルはどのように形成されていったのか?
この本に触発されて走ることを始めたという読者も多い。(わたしは残念ながらその一人にはならなかった)

著者の敬愛するレイモンド・カーヴァーという作家の、『愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)』をもじったエッセイ。

5,『遠い太鼓/村上春樹』

村上春樹氏の旅行記の中で、個人的に一番好きな一冊。
ギリシャとイタリアを中心に滞在し、そこで長編小説を二本(『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』)書き上げる。

閑散期のうらぶれたギリシャ。
人々がバケーションを楽しむ夏のギリシャの面影はそこにはない。
うんざりするほどレイジーで喧しいイタリア。

日本での面倒事を回避して海外に出た結果、そこに待ち受けるは日本とはまた違った形での面倒なのかもしれない。
作者の日常が、小説にどのように影響するのか?
次回はそんなことを意識しながら読んでみたい。

6,『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹』

一番好きな作家の、一番好きな本。
とことん異世界にスイッチしたい時に。
大丈夫。最後にはうまく現実に戻ってこられるはず。
あまりに理不尽で、止めることのできない世界の流れに、「僕の意思」は存在しうるのか。

7,『舟を編む/三浦しをん』

最近の自分のヒット。
日本語が好き。
美しい言葉が好き。
そんな方に。

日々使っている言葉は、覗きこむとこんなにも深く、澄んでいる。
会話や文章は、そんな言葉の海を舟ですうっと渡っていく作業に似ているのかもしれない。
それはどこに行き着くでもなく、あるときには静かに、あるときには荒々しく海を渡る。

8,『夢をかなえるゾウ/水野敬也』

留学に持っていった唯一の本。

「こんな世界クソ食らえだ!」
「ああ、もうどうだってよくなっちゃった」

そんな時、わたしは本の世界にスイッチします。
この世界だけは、誰も踏み込むことのできないわたしのアナザーワールド。

けれど、どうしたって現実に向き合わなきゃならない時もある。

そんな時、ガネーシャに喝を入れてもらうことにしている。
全然お手本にはならないけれど、あの象の神様の言葉は不思議と心に沁みる。

9,『最低で最高の本屋/松浦弥太郎』

「暮らしの手帖」前編集者で、エッセイストで、本屋経営。

彼の人生は、「好きなことやればいいじゃん」と背中を後押ししてくれる。

そう。わたしたちは、時代から言っても、わりに選択の自由が与えられている世代だ。
「ねばならない」で自分の今を言い訳するな。
彼の言葉は、そんな喝のようにも聞こえる。

ちなみに、松浦氏はこの四月からクックパッドに移籍したそうだ。
なんとの波瀾万丈で、愉快な人生だなあ。

10,『デミアン/ヘッセ』

自分はこのままでいいのだろうか――。
もっと他に、生きるべき道があるのではなかろうか。
そんな風に思い悩むわたしの脳天を貫いた一冊。

各人にそれぞれ一つの役目が存在するが、だれにとっても、自分で選んだり書き改めたり任意に管理してよいような役目は存在しない、ということを悟ったのだった。

詳細レビューはこちらを参照ください。『デミアン/ヘルマン・ヘッセ』

11,『車輪の下/ヘッセ』

こちらもヘッセの名作。
デミアンと違い、こちらの主人公は傷つきやすい青年期をなかなか抜け出すことができないでいる。
悩み、思考し、ブレ続ける優等生である彼は、どのような人生を送っていくのだろう。
最後の結末にため息をつかざるをえなかった。

12,『変身/フランツ・カフカ』

この世の中は、理不尽に満ちている。
人生は、生まれながらに不平等だ。
完璧な論理性など、この世界では何の役にも立たない。

人はただ、自分を取り巻く狭い世界の有り様や変化を受け入れていくしかない。
そこには、「受け入れ方」というものが存在しているだけだ。

人間の無力さと、環境適応能力の限界が試される。
「あり得ない」はあり得るのだ。

13,『ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦』

小学生の目線から見た、奇妙な出来事の描写。
人は、いつの間に「妥当な現実」を生きるようになるのだろう。
あるいは、いつまでも夢うつつでは、上手く大人にはなれないのかもしれない。

主人公の同級生が語る死生観が、特に印象的だった。

森見登美彦の本は、日常の風景に混じってするすると自然に流れていく異世界の描写がとても美しい。

おわりに

以上がわたしの「現時点での」13選です。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
人は、その時どきによって考え方がくるくる変わります。
そして、好きな本や、それらの感じ方や捉え方もどんどん変わっていくでしょう。

自分の中でも、好みの変化や、同じ本を読んだ時の感じ方の変化に驚いています。
だから、読書はやめられない。

それは自分を写す鏡であり、また自分を全くの別物にしてしまう(少なくともその世界に浸っている間は)体験でもあります。

時に自分の魂を救ってくれ、時に心を踊らせ、時に非日常の世界をぐるりと巡らせてくれる。
それが、ぽんと差し出されたパッケージツアーのようではなく、自分自身で形作ることのできる、主体的な体験であるのです。
そんな素敵な旅のお供をしてくれる作家たちに、敬意を込めて。

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