『Carver’s dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選/レイモンド・カーヴァー(村上春樹訳)』

今いちばん欲しい物の中に、『レイモンド・カーヴァー全集』がある。
というか、それ以外のものにはほとんど興味が持てない。
元来、物欲はない方なのだ。

そもそも、この『Carver’s dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)』に手を出したことから全ては始まった。
村上春樹氏がその短編と詩とエッセイをひとつ残らず訳してしまうほど推奨する、短編作家である。

レイモンド自身は、ブルーカラー労働者として長年働いたり、アルコール依存症になって施設に入ったり、かなり忙しい人生を送っていた。
もし彼がそうでなかったら、もっと多くの作品が世に出たかもしれないし、作品には深みがなかったかもしれない。

「これは好き嫌いが分かれそうだ」というのが素直な感想。

なにしろ、「何を伝えたいのか」ということがさっぱりわからない。
村上春樹よりもその傾向が強い。

かと言って、「何でもない牧歌的な日常の風景」を切り取っているというわけでもない。

なんだこれは?
という、わけのわからない話が続く。

けれど。けれど、そこで終わらないのだ。

「あるいは人生とは、こういうものかもしれない。表面に出てこないだけで」と思い当たる場面が多く出てくるのだ。
もちろん、わたしはわたしの視点でしか世界を見ていないのだから、一概には言えない。
そういった「人生の裏側における共感」とでも言うべき快感が胸を貫く。

読書って、そんなふうに個人的で自由なものだとわたしは思う。
あれこれ分析したり、解説したり、そういったことにしか興味を抱けない人には、おそらく「わけのわからない文節の羅列」に見えてしまうのかもしれない。

こんな作家を掘り起こし、日本の読者に広めてくれた村上春樹氏に感謝。

ブログ運営者

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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