『アンソロジー そば』

ひどくそばが食べたい。
こんな本を読んだせいだ。

わたしは元来、そばよりうどん派なのだが、この本を読んで「なるほど」と思わないわけにはいかなかった。

つまり、大阪に住んでいる限り、うまいそばにはあまりお目にかかれないという事実があったのだ。
「東京では、金を出さねば旨いものが食えない」と決め込んでいたわたしにとって、これは嬉しい発見でもあった。

もっとも、東京という土地があまり好きになれないのだけれど……

本書の内容は、著名人たちがそれぞれにそばへの思いを語る形式で編まれているアンソロジー。

出汁のきいた辛めのそばつゆでズズズッとそばをすする。
盛りそばとざるそばの違い。
天ぷらそばからそばを抜いた「天ぬき」で酒を呑む。
実を挽くところからはじまる、ゆったりとした店。
引っ越しそばの由来。
そばがきやそば湯という、そばの楽しみ方。
そば、ソバ、蕎麦。

読んで写真を見ているだけで、温かいつゆの匂いが漂ってきて、ずううっと一息にそばをすすりたくなってしまう。

食べるものには、いつも物語が加わる。
それは、物理的に旨い不味いの話だけではないことも多い。

他の人のそんな食文化を覗き見してみるのも、また面白いものだった。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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