『坊っちゃん/夏目漱石』

人生は何があるかわからない。

それは24歳のわたしが言うには少し生意気かもしれないけれど、物語を読んでいるとそう思う。
読書家の子は早熟だと言うけれど、それは小説を読むと、様々な人生が疑似体験できるからではあるまいか。

いつの時代も、人生は予測不可能なようである。

夏目漱石の時代も。

ひょんなことから田舎で数学教師をすることになった主人公。

そこでは、先生いじめをする生徒たち、じめじめとした教師たちの人間関係があった。
それらは、現代のそれと何ら変わりないようにも見えた。

わたしたちは、人間は、必死になって働いて、何を変えてきたのだろう。
それとも、必死にならなければ、何かを保つことができないから、どこにも噛み合わない歯車をぐるぐると回し続けてきたのだろうか。

漱石の時代、心の病気はほとんど認められていなかった。
ネットで自分の置かれた状況を拡散し、同情をひくこともかなわなかった。
匿名の攻撃は少なかったろうけれど、その分じかにぶつかった。

そういうひとつひとつに、彼らは自分で対処するしかなかった。
誰も同情などしてくれない。

そういう意味で、昔の人は強い。

ほんとうに、強かったと思う。

守られると、人は弱くなる。
それがいいとか悪いとかではないけれど、今は傷を舐め合うことで甘え合う時代なのかもしれない。

一昔前の名作を読むと、今の時代が客観的に見られていい。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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