『バースデイ・ストーリーズ/村上春樹 編訳』

誕生日。
わくわくする響きだ。

わたしは、誕生日を祝うのは好きだけれど、祝われるのはあまり得意ではない。

「ちゃんと喜べているだろうか」
「わざとらしい反応になっていないだろうか」

嬉しさよりも、そちらのほうが気にかかってしまう。

だから、誕生日は祝いたい派だ。

本書は、村上春樹が選んだ「誕生日」に関する短篇集だ。

誕生日といえば、子供たちの笑顔、ケーキ、大きなプレゼント、三角すいをした紙の帽子、ハッピーバースディを歌う間の、ロウが溶けてケーキに落ちてしまわないかドキドキする瞬間。

おめでとう!
と電気がついた瞬間の、なんとも言えないはがゆい気持ち。

ケーキの上に乗ったチョコレートのプレートをもらえる嬉しさ。

そんな光景が目に浮かぶ。

けれど、本書に収められている誕生日に関するお話は、どこか切なく、哀しく、乱暴である。
誕生日は、決して幸せなそれでない場合もあるし、
奇妙なほど、「正統派」からズレた祝い方をする話もある。
静かで、ほんの小さなロウソクが1本灯るようなお話もある。

こう言ってしまっては相当に極端なのだけれど、海外文学(とはいっても、かなり偏った趣味だけれど)を読んでいると、なんだかその豪快さに驚くことがある。

日本の小説を読んで、「ああ、これは華奢な少女が麦わら帽をかぶって微笑んでいるようだなぁ」と思うとする。
それに比べて、わたしが出会う海外の話は、筋肉質でよく日焼けした男性が、強いお酒を飲んでいる感じがするのだ。

『バースデイ・ストーリーズ』

今年の誕生日は、どんなふうだろう。

ブログ運営者

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
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