『ムーミン谷の仲間たち/トーベ・ヤンソン』

わたしがムーミンを好きな理由。
キャラクターがかわいいのはもちろんだが、作者であるトーベ・ヤンソンの考え方にひどく共感する部分があるからだ。
最近でも、「スナフキンの名言」なんて風に話題になったりもしている。

もともとムーミンは、大人向けに作られた作品だ。
昨年はトーベ・ヤンソン生誕100周年記念の年で、ヘルシンキで開催されているトーベ・ヤンソンに足を運んだ。
たまたまその時ヘルシンキ郊外の友人宅にいたのだ。ラッキーだったとしか言い様がない。

そこで、トーベ・ヤンソンの人生や、彼女の作品、その背景を目にした。
その愛らしさから子供たちに爆発的人気となったが、それは彼女の意図するところではなかった。
その証拠に、彼女はムーミンのコミックを描くことをやめてしまった。

今回初めてきちんと作品を読んで(日本語でだけれど)、その深さがわかった。
作品の何気ない一言一言に込められた、シニカルで悟ったようなメッセージ。
牧歌的であるようで、はっとさせられる。

自分につきまとう虫に、スナフキンはこう言う。

「おまえさん、あんまりだれかを崇拝したら、ほんとの自由はえられないんだぜ。ぼく、よく知ってるがね」(P18)

やっと、がやがやした親戚たちの中で仕事をすることから解放されたヘムレンはこう言う。

「いや、だめだ。ぼくは、こんなことはいやだぞ。ぼくはたったいま、いやですということを、おぼえたところなんだ。ぼくは老人年金をもらってるんだ。すきなことだけして、ほかのことはやるもんか」(P147)

それは童話であると同時に、わたしたちが日々感じることを、嫌味なく映しだす。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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