『青豆とうふ/安西水丸 和田誠』

安西水丸氏。和田誠氏。
この二人は、「文章の書ける」イラストレーターとして知られている。

彼らを知ったきっかけは、村上春樹氏。

はじめは安西水丸の、のほほほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んとした絵に、なんとも言えない気持ちになった。

ただ陽だまりのようにあったかい気持ちになるのとは、また違う。
その絵の持つ、つるりんとした陶器のようななめらかな見た目と、柔らかく包み込むようでいて、ところどころ出っ張っていたりする。
その絶妙な緊張感というか、バランス。
これは、見れば見るほどハマる。
はじめは、「なんだこれ? 下手くそじゃん」とすら思う。
けれど、抜け出せなくなる。
一度身をうずめると、もう立ち上がれなくなるソファみたいに。

和田誠氏の絵は、初めて見た。
こちらは、よりリアルにその風景が浮かんでくる絵のように感じた。
とは言っても、写実的というのではない。
線引きも曖昧で、やわらかな印象なのだが、やけにリアルなのだ。

その二人が、交互にエッセイを描き、交互にイラストを挿入していくという構成。
これをわたしは、残業続きの日々の昼休みに読んだ。

自分のエネルギーや体力に余力がない時、こういう短めで読みやすいエッセイは重宝する。
かと言って、物足りないわけでは決してない。

なるほど二人とも、かなり強烈な個性でもって体験を話してくれる。

そして何よりも驚いたのは、和田誠氏のお嫁さんが、あの「平野レミ」だったことだ。
あの文章を書く人と、平野レミ……
人は見かけ(文字としての)によらないのかもしれない。

いや、そういうわたしは、平野レミのことをあまり知らない。

この本の題名を付け、解説も書いている村上春樹氏。

最後まで読み切った時、「なるほどなぁ、いいトリオだなぁ」と思う。

それも、三人いつも一緒ではなく、それぞれに独立して、折々に交わるからおもしろい人々だ、と感じた。

『青豆とうふ』。
いい響きだ。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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