『TUGUMI/吉本ばなな』

短い人生を、太く、深く生きる人たちがいる。
彼らは、自らの命を短いと悟っているからこそ、それほどまでに燃え上がるような人生を送るのかもしれない。

ある意味で、後先を考えずに素直に生きること。
それは、将来ばかりを心配する「健康な人」には決してできない生き方なのかもしれない。

それだけに、彼らの生き方はとても響いてくる。

主人公のいとこである、「つぐみ」。
彼女は生まれつき体が弱く、長くは生きられないと言われていた。

それゆえに、家族に乳母日傘の状態で育てられ、自由気ままにわがままに育った。
そんなつぐみに、主人公である「まりあ」はいつもいじめられた。
けれど、まりあはつぐみを嫌ってはいなかった。

手を焼いていたということはあるけれど、嫌ってはいなかった。
嫌いにはなれなかった。

つぐみには、どこかそうした、人を惹きつけるところがある。
その根源は、やはり短い人生にぎゅうと詰まった彼女の生命からくるのかもしれない。

「君の心は丈夫だし、君は気骨があるから、ずっとここにいても、世界中を旅している奴よりたくさんのものを見ることができるよ。そういう気がするね」P118より

これは、つぐみが初めて素の荒々しい彼女自身を見せたボーイフレンドの言葉だ。

ここには全てが詰まっている気がしてならない。
つぐみの生き方の全てが。

深く、深く生きたい。
一瞬一瞬を、全身全霊で。

じぶんひとりでやっている分には、それはわりにお気楽にできる。
もちろん難しいけれど、どうなったって自分だけの責任で、自分だけの苦しみで終わることができる。

けれど、そこに大切な人を巻き込んでいく時。
わたしには、そんな思い切った生き方ができるだろうか。
迷惑をかけてまで。

でも、深く深く生きるには、やっぱりひとりじゃ駄目なんだ。
つぐみの生き方からは、「自分」ってやつと、「つながり」ってやつの両方を強く感じることができた。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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