【引きこもりの北欧紀行】第二章その8 中世の北欧市場ってどんなふう?

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【引きこもりの北欧紀行】第二章その1 ゴットランド島 憧れの魔女の島へ その1

 ほとんど海に近い街の端では、大きなマーケットが開かれていた。
 そこでは半裸の男性が我が物顔で歩き、麻の衣装を身につけた女性がはちみつを売り、甲冑を被った男性が行進し、大きな帽子を被った若い女性が糸を紡いでいた。

それはまるで積極的タイムトラベルだった。
地元の民も観光客も、皆が相当真剣にこの祭りに入れ込んでいることが伺えた。誰も彼もが「中世のゴットランド島民」になりきっていた。日本にも確かに祭りはあるが、ここまで徹底したものはなかなかないのではないだろうか。

 ある夫婦がりんご飴を売っていた。僕は日本の祭りを思い出し、少し懐かしい気持ちになった。
ここのりんご飴は日本のそれのように人工的で真っ赤な色はしておらず、自然な黄金色を放っていた。
夫(と思われる人物)の方がりんごに飴を塗り、妻の方がそこにシナモンやココナッツを散りばめていた。
そして、人間よりも先にたくさんのハエたちがりんご飴を堪能していた。これから自分たちが口にする飴にハエが止まっていようがどうしようが、そんなことを気に留める人はここにはいない。僕は少しだけ気にするけれど。

 マーケットを通り抜けると、そこには海が広がっていた。波は静かに揺れ、潮風は柔らかにあたりを包んでいた。そこは砂浜ではなく、小さな石の浜だった。僕はそこで波を受けている石がとても気に入った。表面はつるりとしてなめらかで、その陶器のような色と肌触りは、若くて肉付きの良い、白い肌の女性を思わせた。

 僕は再び疲れ始めていた。
 「本当にすぐ疲れるのね」彼女は憐れむように言った。
 「すまないね。あまり外にいることに慣れていないもので。いつも内にこもって、頭ばかり動かしているものだから、脚がついていかないんだ」
 「あと、新鮮な空気にも慣れていないのね。帰りましょう」彼女はいたずらっぽく笑って言う。

 僕たちは帰りにスーパーマーケットに寄り、昼食と夕食を調達した。ちょうど宿に帰り着く前、雨が降りだした。
僕は、午後一時に僕が宿に帰ってしまうことを正当化できた気がした。例の小説を読みながら簡単な昼食を済ませた後(僕の脳は使われることを望んでいた)、僕は深い眠りに落ちた。

 気が付くと午後三時を回っていた。僕の脚はだるさを訴え、熱いシャワーを浴びることを望んでいた。おそらく、僕はそろそろきちんと加熱調理された温かい食べ物を口にした方がいいのだろう。明日はスープでも作ることにしよう。宿にキッチンがあるというのは、こういう時にありがたい。

半裸のスウェーデン人

これ、日本でやったら多分捕まるだろうな。

北欧的勾玉

色とりどりの勾玉みたいだ

北欧のトロール

アナと雪の女王に出てきたトロールは、中世にも存在していたらしい

かっこいいスウェーデン人

少年と青年。
後ろ姿がすでにハンサム。

スウェーデンのりんごあめ

この距離から見れば、日本のりんごあめよりもはるかに食欲をそそられる。

石の浜

ごつごつとした石の浜は、それでもなんだか柔らかいのだった。

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【引きこもりの北欧紀行】第二章その9 言葉は壁にも橋にもなる

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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